高校生になれば誰もが今後の進路について考え始めると思います。数ある進路の中で大学受験を選択する学生に向けて、大学入試の方法を紹介します。
大学入試は大きく分けると3種類あります。
・一般選抜
・学校推薦型選抜(公募制,指定校制)
・総合型選抜
今ではどの受験方法も一般的になっているため、これから受験を迎える方であれば情報として知っておいて損はないでしょう。
今回は筆者も経験した学校推薦型選抜の中でも「指定校推薦(指定校制)」について詳しく解説していきます。
指定校推薦(指定校制)とは
指定校推薦とは、大学が指定した高校に通う生徒のみが出願できる制度です。
大学側が高校のこれまでの進学実績に応じて指定して推薦枠を設けます。そのため、自分の通う高校が大学から指定されていない場合は、指定校推薦での受験を出願する権利はありません。
基本的には私立大学が中心となって実施しており、募集枠は1つの高校から1~3人程度が多く、それぞれの枠に出願条件があります。
出願条件を満たし、校内選考に見事選ばれることができたら受験が可能になります。
指定校推薦の募集から合格までの流れ
指定校推薦は募集から試験までの日程が大学や学部・学科によって異なりますが、一般的な時期は決まっています。
一般的な指定校推薦の募集から合格までの流れ
①高校3年 6月~8月ごろ 募集スタート
各大学から指定校推薦の対象になっている高校に対しての募集枠の詳細な情報が通知されます。通知を受けた高校側の準備が整い次第、校内で出願者を募集します。
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②高校3年 9月~10月ごろ 校内選考
出願者の募集を締め切り、校内選考を実施します。
校内選考は指定校推薦における最大の難関です。
校内選考の結果、推薦対象者を決定します。
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③高校3年 11月ごろ 出願締切&試験実施
校内選考に合格した受験生が指定校推薦枠で大学に出願し、大学によって決められた試験を受験します。
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④高校3年 12月ごろ 合格発表
試験の合否の通知が学校に送られます。
一般選抜より早い段階で受験が終わるような日程になっています。
指定校推薦の試験内容
高校での校内選考を受けた後、各大学で指定された試験を受けます。
指定校推薦の試験内容は主に以下の6つから選ばれることが多いです。
・志望理由書などの書類提出
・小論文
・面接
・口頭試問
・プレゼンテーション
・共通テスト
一般選抜の試験より、学力試験以外の試験が占める割合が大きいため、受験勉強とは違った対策をする必要があります。
つまり、大学によって出願条件と試験内容が異なりますので、事前に情報収集と試験対策の準備をしておくことが大切です。
指定校推薦で合格するための基準と条件
指定校推薦を合格するための基準と条件は、主に募集枠の「出願条件を満たすこと」と「校内選考を通過すること」です。
出願条件を満たすこと
指定校推薦の募集枠に出願するには、出願条件を満たすことが必須です。
まず、大学側は指定校に対して独自の推薦基準(出願条件)を提示します。
出願条件として成績基準がある場合は、高校の成績を数値化した「全体の学習成績の状況(評定平均)」※①もしくは「学習成績概評」※②の最低基準が提示されます。
(例)「全体の学習成績の状況(評定平均値)4.2以上」
※①「全体の学習成績の状況」=高校1年生の1学期(前期)~高校3年生の1学期(前期)までの各教科の成績(5段階評価)を合計し、教科数で割った数値
※②「学習成績概評」=「全体の学習成績の状況」をもとにA~Eの5段階で表したもの
基準となる成績に影響する定期テストは合計で12回(2期制の場合は10回)行われます。そのうちの5回(2期制の場合は4回)が高校1年生の時に実施されるため、高校2年生修了時で成績の8割が決定します。
つまり、高校1年生のうちから定期テストや実技試験、課題の提出などをしっかりと行い、すべての教科に注力することが重要です。
校内選考に通過すること
指定校推薦の募集枠に出願するには、校内選考に通過することが必須です。
校内選考の基準は高校によって異なり、審査基準や選考内容は公開されていません。
考えられる校内選考の基準は、全教科の成績、部活動・委員会活動・課外活動の取り組む姿勢、出席日数などの日頃の頑張りになります。
先生から印象はとても重要なので、日々の生活を意欲的に取り組んだほうが良いです。
他にも同じ大学の枠を志望する人がいた場合は比較検討され、学内会議を経て最終的に推薦する生徒を決定します。
指定校推薦に向けてやったほうが良いこと
指定校推薦に向けてやったほうが良いことは2つあります。
1つめは学校生活を前向きに過ごすことです。
前述したとおり、指定校推薦で合格するには明確な基準と条件を満たす必要があります。
これらは一朝一夕で対策できることではないので、学校生活への過ごす姿勢が大切になってきます。
2つめは悩んだときは先生や両親、友達に相談することです。
指定校推薦に向けての準備は、高校3年生になって本格的にスタートします。
高校2年生のうちに、自分の高校がどの大学の指定校になっているのかなどの情報を事前に調べ、担任の先生などに相談してみると良いでしょう。
受験するかどうかを冬までに決めておくのがおすすめです。
高校3年生では、応募に必要な書類をまとめたり、出願に必要な情報収集したりして、7月ころには最終的な出願先を決めましょう。夏休みには、志望理由書・小論文・面接などの試験対策を進めると良いでしょう。
思ったよりスケジュールの進行が早いため、前もった準備や対策を進めることが大切です。
指定校推薦の合格率
指定校推薦の合格率=ほぼ100%
理由としては、指定校推薦が大学と指定校との信頼関係に基づいて行われる入試方法であり、大学側が推薦された生徒を不合格してしまうと信頼関係が崩れてしまうためです。
信頼ある高校が推薦した生徒だから問題ないという前提で選考が行われるため、よほどのことがない限り不合格にはなりません。
ただし、信頼関係が揺らぐと推薦枠がなくなったり、不合格になるケースがあります。
具体的な例
・指定校推薦で入学した学生が留年や退学した(来年以降の枠がなくなる可能性あり)
・試験や提出課題の出来が悪すぎる
・情報不足で志望度の低さが露呈する
・出願資格を満たしていないことが発覚する
・面接時のマナーや態度が著しく悪い
・試験日にやむを得ない理由をなしに遅刻や欠席する
・高校を卒業できない
・入学手続きを期日内に行わない
・出願後や合格後に犯罪や事件を起こす
※医学部など一部の学部では合格率が下がることもあります
指定校推薦のメリット
指定校推薦のメリットは、主に5つ挙げられます。
・推薦枠を得られさえすれば、ほぼ100%の確率で合格できる
・一般的な学力試験を受ける必要がない
・一般選抜より受験が早く終わる
・推薦枠が多い高校では、自分の学力より高い大学に進学できる
・受験にかかる費用を削減できる
上記3つは前述した通りです。
残り2つの「自分の学力より高い大学に進学できる」と「受験にかかる費用を削減できる」という点について解説します。
自分の学力より高い大学に進学できる
指定校推薦では、学力試験以外の比重が大きいことで、自分の学力レベルより高い大学への合格が目指せます。
一般受験に対するプレッシャーが嫌という方や自分の学力では足りないが行きたい大学の枠があるという方にとってはおすすめです。
受験にかかる費用を削減できる
指定校推薦では、受験にかかる費用を削減できます。
指定校推薦は推薦枠のみ受験になるため、必要以上の受験費用はかかりません。
しかし、一般選抜の受験生は志望校を含め何校か受験するため、受験する分だけ費用がかかります。
私立大学の1校あたりの受験料の相場は、30,000円~35,000円になります。
大学入学共通テスト(3教科以上)は、18,000円(成績通知を希望の場合、+800円)。
大学入学共通テスト(2教科以下)は、12,000円(同上)。
国公立大学2次試験は、17,000円となります。
※出典 公益財団法人 生命保険文化センター「ライフイベントから見る生活設計」
一般的な受験生は、1人あたり平均で3~6校を受験すると言われており、受験費用は1人あたり平均で30万円ほどかかると言われています。
つまり、指定校推薦で約30万円ほどの費用を削減することができます。
指定校推薦のデメリット
指定校推薦のデメリットは、主に5つ挙げられます。
・自分の高校に志望大学の推薦枠があるとは限らない
・1校あたりの推薦枠が非常に少ない
・校内選考で他の人に推薦枠を取られる可能性がある
・原則的に専願のため、合格したらその大学に必ず入学しないといけない
・大学入学後、一般選抜組よりも学習で苦労する可能性がある
自分の行きたい大学と学部・学科が決まっている場合は、推薦枠の有無と枠数、他の生徒の出願状況を事前に把握しておいたほうが良いでしょう。
また、受験勉強しなくて楽だからという単純な理由で出願してしまうと、後悔してしまう可能性があるため注意しましょう。
「人生で一番つらいことは大学受験」と言われていますが、指定校推薦はその大学受験を経験しないため、経験値や学力で一般選抜組より劣ってしまいます。だからこそ、試験終了後や大学入学後も学習意欲を持つことが大切です。
筆者の実体験
筆者の指定校推薦の実体験をご紹介します。
今後の進路の選択肢の1つとして参考にしていただければと思います。
筆者は神奈川県の高校(偏差値64~67)に通っていて、指定校推薦でMARCH大学に進学しました。
筆者が指定校推薦の存在を知ったのは高校1年生の冬でした。知るきっかけになったのは、2個上の兄が大学入試をAO入試で受験していたからでした。
当時、大学は一般入試しか受験方法はないと思っていましたが、兄が違う受験方法で進学先を決めていたので衝撃でした。
兄の影響により、自分だったらどの受験方法で大学に行くのが良いか考え始めました。
筆者の高校が自称進学校だったので、進学率が高く、難関大学の合格者も排出していました。そのため、指定校推薦の推薦枠も豊富でした。
そこで筆者は2つの選択肢を天秤にかけて考えました。
高校3年間の成績を高く維持するか、高校3年生の受験シーズンで一気に勉強を追い込むか。別の言い方をすると、長期的に少し辛い思いをするか、短期的にものすごく辛い思いをするか。
筆者はプレッシャーに弱く、つらいことから逃げたくなる性格なので、悩んだ末に、前者を選びました。つまり、指定校推薦で行くと決めました。
そうと決まれば、成績を上げることと学校生活を充実させることを意識して過ごしていました。
成績を上げるためには、定期テストで良い点を取ることが大事なので、テスト期間中はテスト対策に時間を費やしました。
ただ、テストの点数も波があるため、定期テストだけでは成績を上げられないと思い、提出物の期限を守ったり、授業に積極的に参加したりと先生らの印象を悪くしないようにしました。
その結果、高校1年~高校3年の全体の学習成績の状況(評定平均)は 4.3 を取ることができました。
高校3年の6月ごろ校内で指定校推薦の推薦枠が公開され、募集がスタートしました。
全体の学習成績の状況は 4.3 だったので、MARCH大学の推薦枠のある程度は出願条件を満たしていました。
筆者は文系で経済系の学部に行きたかったので、出願条件を満たした上で行きたい大学を探してみると1校だけ見つけました。
行きたい大学の推薦枠が決まれば、いざ、担任の先生に「○○大学○○学部の指定校推薦を受けたいです」と申告しました。出願条件は満たしていたため、校内選考を受けることは可能とのことでした。
当時、先生は詳細について教えてくれませんでしたが、噂で同じ推薦枠を他の生徒も志望している情報が耳に入ってきました。
つまり、筆者ともう一人の生徒で校内選考が行われていました。
結果として、筆者の部活動や日々の学校生活の取り組む態度が評価され(自画自賛)校内選考を通過することができました。
したがって、MARCH大学の指定校推薦を出願することができました。
筆者が出願した推薦枠の試験内容は書類選考のみでした。そのため、志望理由書の書類を提出しました。見事、合格することができました。
受験が終わったのが12月頃でした。気分的には受験が終わってものすごく気が楽になりましたが、友達や周りの人は受験シーズン真っ只中のため、遊んだりはできませんでした。ただ、友達の受験のサポート役として友達を支える時間を作ったりしてました。
無事高校を卒業して大学に入学できましたが、大学生活を過ごす中で感じたことは、指定校推薦で入ると一般選抜で入学した人と学力に差があるということでした。
選んだ大学も自分の学力レベルより上の大学になるので、講義についていくのに苦労しました。
ただ、充実した大学生活を送るには、指定校推薦だからとか一般選抜だからとか関係なく、ある程度の学習の努力が必要だと感じました。
今回の指定校推薦は、自分にとっては最適な判断だなと思います。それぞれメリット・デメリットを体感しましたが、この選択に後悔はないです。
すごくざっくりとした体験談にはなりますが、指定校推薦も受験方法の1つの選択肢としてお考えいただければ幸いです。
まとめ
今回は、学校推薦型選抜の1つである指定校推薦について解説しました。
大学受験は人生の中で大きな分岐点になります。将来的に夢や目標が決まってる人は、この指定校推薦を1つの進学の手段として考え、行きたい大学に行くことをおすすめします。
ぜひ今回の内容を進路の参考にしてください。